9月30日(日曜日)味沢さんの『DVはなおる』という本のこと

  • 2018.09.30 Sunday
  • 12:37

 

 二冊の本は「男性の生き方」私の言葉で言うと「男生学」(「男性学」とは違う)の参考書だ。一冊は白岩玄著『たてがみを捨てたライオン』(集英社:2018年9月30日刊)。もう一冊は味沢道明・中村カズノリ著『DVはなおる・続 被害・加害者が語る「傷つけない支援」』(ジャパンマシニスト社:2018年9月18日刊)である。*ちなみに、本書以前に正『DVはなおる』が(2016年ギャラクシーブックス出版)ある。

 

 最初の本『たてがみを捨てたライオン』は小説。たてがみは「自分の強さを誇示する雄ライオンのたてがみ」のことで、人間男性にもあるみえない「男らしさ」のたとえ。出てくる男性たちは三人。直樹、慎一、幸太郎たちは、それぞれが、仕事、夫婦、親子、恋人、友だちという生活に関わる人との関係の中で「男らしさ」を問う。そこには、反面教師の男もたくさん出てくるし、中途半端な「女性への物わかりのよさ」が、根本的には何ももたらさないということも語られる。

 

 決してハッピーエンドだけではないが、おもしろさの中に男女の本質的な課題を明示する。性別役割分業のこと、女性の権利拡大への躊躇、男性のする家事育児への社会的目線、会社での男性化した空気など、現代の抱える「メンズリブ」の困難さを、素直に物語の中に織り込んで読ませる。男性的に「がんばれば何とかなる」とか「勢いと力」で解決できるという主張を、ちょっと距離を置いて考える良い小説だと思う。

 

 さて、今日の本題は、後の本『DVはなおる』だ。味沢さんとは旧知の仲。『お・は』にもときどき登場してもらっている。正直言うと(笑)、掛け値無しで、とても良い本だ。18人の男女体験者の物語はリアリティありすぎでほんとうにいい。これは、「あるある」を超えて、どこにでもありそうだけでなく、これから自分も出会いそうな「物語」だったり、今継続中で参考になる人もたくさんいると思う。

 

 この本の一番の特徴は、DV加害者と言われる男性の立ち直りを「説教」や「理念」だけで語らないところだ。私の友人でもある相談専門家は最近のDV事案について「加害者男性の話を聞くと、自分は反省しているんですが、どうもどの程度、どの深さで反省しているかが不明ですね。どこかで相手に責任がある、こうなったのはあいつのせい……というところから抜け出られない。それから、一方的に男性だけの問題で片付けてしまって良いのか?ということ。妻や子どもの立ち位置や家族の在り方が問われなくて良いのか?という点で、DV男性への非難だけで問題が終始してしまうところも、最近は問題ですね」と言う。味沢さんは、こうした現実を踏まえて本書を作っている。

 

 味沢さんは、フェミニズムにも問題を提起している。誤解されるといけないが、それは、フェミニズムを敵視して「男性を取り戻せ」的な古ぅ〜い、どうしようもない男尊女卑や性別役割分業や、「性の多様性」も無視して、「男性らしさ」「女性らしさ」を強調するジェンダーバイアスばりばりの神話づくりとは違う。味沢さんは1990年代にフェミニズムに深く関わり、フェミニズムだけでは男性の問題は解決しないということで京都・大阪で「メンズリブ研究会」を仲間と立ち上げた。私も、「男にも女にも育児時間を・名古屋」を立ち上げて、遠くからささやかに支持していた。

 

 その後、味沢さんはDVや夫婦の問題に悩む人たちを支援するために「日本家族再生センター」を開設し、今に至る。のべ5500件以上の案件に対応しており、蓄積も半端ではない。そこで磨き上げた「複合的支援」というノウハウも本書には書かれている。基本は「傷つけない支援」である。誰かが悪い!という論理だけでは、いくらカウンセリングを重ねても元気や勇気は出ない。彼の一つのキーとなる考え方は「パワーコントロール」に執着しないことだ。人は、人との関係で、優位に立とうとする。男性で、自己肯定感が不足していたり、防衛的すぎ攻撃的すぎると、家族に対してDVやモラハラをする。そうしたパワーコントロールは家族(ひいては社会)では通じないと、男性(女性)に理解を促す支援を追求してきた。

 

 先に述べた友人の専門家によると「妻からのDVがある場合に、多くの都道府県では、女性のようなシェルターが男性にはないのです。これは大きな問題です。DV被害者はとにかく守らなければなりません。男女関係なくです。DVは被害者・加害者を超えた支援や保護が必要なのかもしれません」と言う。味沢さんのセンターでは男女関わらずシェルターがあり、利用者も多い。

 

 とにかく、男性への支援はここから始まるという本。味沢さんは「非暴力の社会につながる」とこのメンズリブを位置づける。パートナーとうまくやっていくためにも、また「今、ちょっとまずいな」と思っている人にも読んで欲しい本だ。

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